当時2歳の義理の娘の頭に暴行を加え死亡させた罪などに問われた父親の控訴審で、大阪高裁は懲役12年とした一審判決を取り消し、逆転で無罪を言い渡しました。
裁判長「主文、原判決の有罪部分について被告人は無罪」
全面的な“逆転無罪”を言い渡された男性は、ハンカチで目元を拭いながら判決の理由を聞いていました。
今西貴大(たかひろ)さん(35)は、2017年、大阪市東淀川区のマンションで義理の娘、希愛(のあ)ちゃんの頭に何らかの方法で衝撃を加え、死亡させた罪などに問われていました。
一審の裁判員裁判で無罪を主張した一方、検察側は「外部からの強い暴行により死亡した」と指摘。暴行の中には、体を揺さぶり脳を損傷させる「乳幼児揺さぶられ症候群・SBS」などの可能性も含まれていました。
これに対し、弁護側は「心臓の炎症が見つかっていて、病気が原因で死亡した」などと訴えました。
SBSをめぐっては、2018年以降、少なくとも10例の無罪判決が出ていて、科学的根拠が議論されています。そして…。
裁判長「主文、被告人を懲役12年に処する」
一審の大阪地裁は「暴行を加えられるのは被告以外に考えられない」として、懲役12年の判決を言い渡していました。
控訴審でも今西さんは無罪を訴え、裁判が結審した後の今年7月、大阪高裁は今西さんを“異例”の保釈。5年半に及ぶ勾留が解かれたのは、11回目の保釈請求でした。
今西貴大さん「これがGPSです。保釈条件があって、外に出る時はずっとつけとかないといけない。でも、家にいても不安だからつけている」
他にも保釈の条件として、「面会した人物の記録と報告」や、家にはカメラも設置。制限された生活の中、判決の日を待ちわびていました。
今西貴大さん「そもそも無実やから当然の判決が出ると思っている」「裁判所がちゃんと認めてくれたでって、(愛希ちゃんに)これでほんまのことが分かったなと言ってあげたいなと思います」「一番言いたいのは無実やでってことを言いたい。でも裁判所って無実という判決ないでしょ。めちゃくちゃ複雑。何もしてないのに」
迎えた、28日の判決。
大阪高裁は、傷害致死の罪については「被害者の体表面に外傷の存在を示す痕跡がなく、暴行の有無は明らかではない。被告が身体的虐待を加えていたことを示す事情も見いだせず、一審判決は不合理であり、是認できない」と判断。一審判決を取り消し、逆転で無罪を言い渡しました。
今西貴大さん「希愛と僕とは本当の親子として過ごしていました。裁判を通じて、警察・検察などが見落としていた『心筋炎』など、希愛が亡くなった本当の原因を見つけることができました。今は真実が分かったことに安堵(あんど)しています。判決の主文は『無罪』でしたが、僕は『無実』です。独房で過ごした5年半、くじけずに闘い続けて良かったと実感しています」
全面的な無罪判決を受けて、大阪高検は「判決内容を精査した上で適切に対応したい」とコメントしています。